メロディーが先か、ベースが先か?

古屋晋一さんの著作「ピアニストの脳を科学する」にこんな記述があります。

ピアニストはメロディの音を、意図的にバスよりも大きい音量で弾いたり、わずかに早く(0.03秒ほど)鳴らすことで、メロディ・ラインを強調しているのです。
(第3章 音楽家の耳より)

音量に関しては置いておいて、驚いたのはメロディを「先に鳴らす」というところです。

 

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

  • 作者:古屋 晋一
  • 発売日: 2012/01/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

エフゲニ・キーシンさんの録音を聴くと、0.03秒どころではなく、かなり早くメロディが先行して全体をリードしている箇所があります。

キーシンさんほどでなくても、多くのピアニストがメロディを先に弾く傾向がある、というのは意外でした。


個人的には、「主役は最後にやってくる」という感じで、メロディが後から弾かれるほうが好きです。

なので、キーシンさんの演奏は居心地が悪い瞬間が時々あります。


オーケストラやロックバンドなどは、ベースやティンパニバスドラム)が一瞬速く入った時の全体が締まる感じが好きなので、ピアノも特に疑うことなく同じように捉えていました。

オーケストラのシンバルなどは「半拍遅いくらいで丁度いい」という意見も聞いたことがあり、なるほど、と思っていました。


キーシンさんとは「少し好みが合わないな」と考えていたのですが、メロディを早く弾くというテクニックがある、となると好みの問題ではないのかもしれません。


なんでしょう、この自分が多数派だと思っていたのが実は少数派だった、みたいな感覚は。

別に自分で派閥を立ち上がるわけではないので良いのですけど。


いろいろなピアニストの録音をまた違う視点で聴いてみます。

  

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